アルファ博士の気ままにトーク♪ 第28話 「雨にもマケズ、風ニモマケズ」番外編 〜興味深い名前 場所と食べ物をご紹介~
公開日時:2025/09/24
みなさんこんにちは。
今日は、先々月に26話でお話した「雨ニモマケズ、風ニモマケズ」の「番外編」をお届けしたいと思います。
「石と賢治のミュージアム」を訪問した前後に、その周辺を探索し、
その中で、いくつか興味深い名前の場所とモノに出会いました。
一つ目、「鬼死骸村(おにしがいむら)」
二つ目、「イギリス海岸」
三つ目、「老海鼠(ホヤ)」です。
三つとも、興味深い名前ですよね。
最近「鬼滅の刃」が大ヒットしていますが、この「鬼死骸村」も鬼征伐に関連しています。
「イギリス海岸」は、宮沢賢治が「あだ名」をつけた場所で、最近の温暖化とも関係しています。
「老海鼠」は、牡鹿半島から三陸海岸の名産の海産物で、採れたての料理は抜群においしいです。
それでは、順番にご紹介していきましょう。
「雨ニモマケズ、風ニモマケズ」の番外編
鬼死骸村 〜明治初期まで実在した村です〜
鬼死骸村(おにしがいむら)ーーー。
この「もの凄い名前」を地図(といってもGoogle mapですが)で見つけたのは、宮城県と岩手県の県境近くにある「石と賢治のミュージアム」の周りを調べていた時のことです。
このあたりは、これも先日ご紹介した井上ひさしさんの小説「吉里吉里人」の舞台「吉里吉里国」の場所でもあるので、
小説の冒頭の部分を改めて読みながら、地図を眺めていました。
小説の中で主人公が乗っている、夜行列車「十和田3号」が、県境近くの「赤壁駅」(実在するのは有壁駅)で急停車する場面です。
するとどうでしょう!
地図の上に「旧国鉄バス鬼死骸停留所」という表示が現れたのです!
最初は「何かの冗談か?」「イベントの名残か何か?」とも思いましたが、検索してみると、そういうわけではなく、「ちゃんとした名前」だとわかりました。
宮城県最北の東北本線「有壁駅」から、県境を越えて岩手県へ入ったすぐのところ、東北本線の東側です。
お暇な時間があったら、Google mapを見てみてください。
下の写真は、「石と賢治のミュージアム」を訪れた際に立ち寄り、撮影した「証拠写真」です。
鬼死骸村のバス停
NTTの電柱にも旧村名の表示が
説明によると、この「鬼死骸村」は江戸時代から明治8年まで続いたのち、周辺との合併で村としての名前は無くなりました。
その後は地名が残って、この名前のバスの停留所は平成28年(2016年)まで使われていました。
このもの凄い名前の起源は、奈良時代の終わりから平安の初めにかけて行われた「坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)」の蝦夷征伐(えぞせいばつ)にあるとのこと。征伐した鬼の死骸を埋めたという由縁です。
東北地方には、その時代の蝦夷征伐に関連するとされる「鬼」がつく地名がいくつかあります。
間欠泉で有名な「鬼首(おにこうべ)温泉」もそのうちの一つですね。
井上ひさしさんの小説「吉里吉里人」の吉里吉里国が、このあたりに設定されたのも、この鬼死骸村の由縁と関連しているのかもしれません。
今、「鬼滅の刃」が大ヒットしていますが、「鬼」というのは案外、いつも私たちの隣に居る存在なのかもしれませんね。
イギリス海岸 〜宮沢賢治が命名した場所 小雨の影響で姿を現す〜
2つ目は、「イギリス海岸」です。
まずは場所が、どこにあるかというと、岩手県花巻市の北上川の河岸にあります。
宮沢賢治がお好きな方は、よくご存知だと思いますが、この河岸は「イギリスの海岸のように見える」と、賢治が「あだ名」をつけた場所です。
「イギリス海岸」は宮沢賢治の書いたものにしばしば登場していて、「銀河鉄道の夜」にも「プリオシン海岸」として描かれています。
元々、北上川のこの場所は、今より西側に大きく蛇行して流れていましたが、江戸時代に洪水の被害から花巻の城下町を守るために掘削し、南北方向に直線に流れるように流路を変更しました。
その開削工事で現れたのが、この「イギリス海岸」の岩盤です。
岩が乾くと白く見えることから、これをイギリスの「チョーク海岸」になぞらえました。
イギリスのドーバー海峡に面するチョーク海岸は、「チョーク」の名前通り、チョーク(白亜)の白い岩石で知られています。
チョークは、学校の黒板などに文字や絵を描く画材になっていますね。
宮沢賢治が健在していた時代の「イギリス海岸」は、たいてい川から露出していて、北上川が増水した時だけ水面下に隠れました。
しかし、現在ではそれとは反対に、いつもは水面下に隠れていて、特に渇水した時、また上流のダムの放水量を調整した時だけ、露出します。
そのニュースを聞いて、今年7月に訪れて撮ったのが、こちらの写真です。「チョーク」が顔を出しています。
イギリス海岸(岩手県花巻市)北上川の水位が下がって露出している
今年の梅雨は全国的に雨量が少なく、平年を下回りました。北上川の渇水も、温暖化の影響とも言われていますので、もしそうだとすると、これは心配なことです。
ちなみに下の写真は、昨年2024年の10月に撮ったものです。
普段はこのように、川が岩盤の上を流れているので、「イギリス海岸」は見ることができません。
昨年2024年10月のイギリス海岸 水位が高く河床は見えていない
牡鹿半島、三陸海岸の海の幸 〜おいしい「老海鼠(ほや)」をぜひご賞味あれ〜
老海鼠(ホヤ)を食べたことありますか?
主に宮城県〜岩手県の海岸、牡鹿半島から三陸海岸にかけての特産で、ゴロっとしたこぶし大の大きさのもので、外見からは植物の球根のようにも見えますが、動物の一種です(貝ではありません)。
生きたホヤを探したのですが、あいにく見つからず、お店に貼ってあった「ホヤのポスター」の写真です
「老海鼠」という漢字も変わっていますが、老のつかない「海鼠」は「なまこ」と読みます。
「海鼠」というのも、海の鼠(ねずみ)と書くので、それも変わっていますね。
また、ホヤは「海鞘」や「保屋」また「保夜」とも書くようで、これらはどちらかというと当て字でしょう。
ちなみに「火屋」も「ほや」と読みますが、これはキャンプの時などで使うランタンに被せるシェードの部分「ホヤ(老海鼠)」に似ているから・・・とのことです。
ホヤの名前については興味深いですが、このくらいにしておきましょう。
さて、肝心のホヤの味ですが、ホヤを食べたことのある方は、たぶん好き嫌いが大きく分かれると思います。
食感はしこしこ、こりこりしていて、貝類に近いですが、磯の香りと、甘み、酸味、苦味、旨みが混じり合った、独特の香りと味です。
食べ方はいろいろありますが、生の刺身を「酢の物」にして食べることが多いと思います。
そのほか、網の上で焼いても美味しいです。
先日、牡鹿半島の先端まで行ったのですが、そこへ行く途中、牡鹿半島西岸の「小渕浜」近くの食堂でいただいた「ホヤ」がなんとも絶品で、磯の香りと甘みと酸味と苦味と旨味が絶妙にバランスした、それは大変美味しいものでした。
老海鼠の、「老」はその外観が、年老いた風に見えるからかもしれませんが、牡鹿半島でいただいたホヤは、「老」とは反逆のフレッシュな美味しさに満ちていました。
ホヤは鮮度が落ちやすく、鮮度が落ちると、鼻につくような匂いや味がするようになります。一度食べて嫌いになったり、苦手に思った方は、そのようなものだった可能性があります。
今回は、ホヤの他にも、名物の真穴子(まあなご)やウニの殻焼きもいただきましたが、どれも絶品でした。
牡鹿半島の先端では、さらに先にある島、「金華山(きんかさん)」を望むことができました。
ぜひ皆様にも一度、牡鹿半島〜三陸海岸を訪れて、素敵な景色と、水揚げされたばかりの新鮮な海の幸を、存分に味わっていただければと思います。
牡鹿半島のホヤ料理
名物の「真穴子」の白焼 わさび醤油がよく合う
ウニの殻焼き 甘みが美味しい
牡鹿半島の先端から金華山を望む
今日のお話はここまでです。
周りを見渡すと、いろいろと面白い名前の場所やモノがあるものです。
また、普段見ているものでも、新たな気持ちや見方で接すると、違う魅力が見えてきます。
これからも、面白いモノ、新しいモノと出会って、楽しんでいきたと思います。
ではまた、ここでお会いしましょう。